14. 性格不一致
「なんなんだ、あいつ……」
不機嫌に呟く蔵馬を横目に、幽助は喜雨に尋ねた。
「どうしたんだ、蔵馬」
「……いつもの喧嘩」
蔵馬の様子を窺いつつも、さらりと言った喜雨に尋ねた幽助はもちろん側にいる桑原たちまでもが呆れた表情をする。
「あーあ。あれね」
「毎回毎回飽きねえな……」
いつもはそう言われる立場にいる二人だが、今回は蔵馬に対して言うことが出来る。それを内心で嬉々としていながらも、表面上は呆れた表情だ。
「本当だよね……」
少しは仲良くすればいいのに。
彼女である喜雨にまで言われる蔵馬が少しかわいそうに思いながら、螢子は口を挟まない。
それは、蔵馬がこちらに視線を移したからだ。
「それは無理だね。あいつとは合わない」
嫌いな人間でも表面上は嫌な顔ひとつしない蔵馬のその言葉に、皆黙ってしまった。
それだけ嫌いなのだと言う蔵馬に、少々複雑な思いのある喜雨。
何せ、反目する第一の理由というのが……。
「そんなに同じ名前ってのが嫌かよ」
喜雨の代わりに聞く桑原に、大きく頷く蔵馬。
「それに性格も合わない」
きっぱりという蔵馬に、全員が複雑な表情をする。
や、お前とあいつは性格一緒じゃねえか、と。
喜雨に言わせれば同属嫌悪、なのだがそれを蔵馬はもちろんのこと、もう一人の“蔵馬”も認めようとはしない。
仲のいい友人たちは皆そう思っているにもかかわらず、だ。
(分からなくもないけれど、蔵馬の場合は)
同い年だし、とかすかに笑っている喜雨を見た蔵馬が言う。
「喜雨は仲良いね……喜雨先輩と」
「うん。同じ名前だからかもしれないけど、良くしてくれるし」
何かと頼れるいい先輩だもん。
喜雨の言葉に、二人の蔵馬に対して思ったこととは逆のことを思う面々。
「オレ、あの人苦手」
「オレもだ。……なんか、怖い」
「そう?」
不思議そうに首をかしげる喜雨。けれど、幽助たちは大きく頷いた。
そんな思いを抱かせるほど、もう一人の喜雨は幽助たちには怖い者として存在していた。
そして、それは学園中の人間がそう思っているだろう、とも。
そんな中で、昔からの知り合いでもない喜雨が懐いているのは喜雨の言った通り、同じ名前であるためかもしれない。
実はもう一人の蔵馬ともう一人の喜雨は幼馴染同士。幼馴染と同じ名前を持つ彼氏を持つ喜雨に対しての想いもあるのかもしれない。
実際どうなのか、本人に聞く勇気はなかったが。
(こっちもよく分かんねえよな)
そんな思いを抱きつつ、どうせ同じ校舎じゃないどころか、高等部と中等部で違うから影響はまったくないと思う喜雨と蔵馬以外の面々だった。
– END –