幕間

「とうとう――――落ちたか」
 
 各評議会議員の下へ最高評議会議長ラクス・クラインとその側近、さらに彼らに関わり、自身の意思でプラント市民を裏切った者たちが拘束されたとの連絡を受けた後、通信画面を切ってからルイーズ・ライトナーは呟いた。
 その顔には何の感慨も浮かんではいなかった。
 しかしそれは周囲にいた同じ評議会議員――――今回の計画を事前に知らされていた者たち――アイリーン・カナーバ、ユーリ・アマルフィ、そしてジェレミー・マクスウェルも同じだった。
 彼らは先の大戦ではそれぞれ考えの異なる者についていた。
 それが良かったのか悪かったのか。
 そんなこと今更考えても仕方がないと皆考えている。
 そしてそんな彼らのうち、アイリーン・カナーバ以外は先の大戦後、戦犯としてその罪を問われた。
 それでも数年前に終戦にこぎつけた大戦後、混乱するプラントにおいてその政治力を買われて皆が戻ってきた。
 そしてそれからは“プラント市民のため”に四人がそれぞれに平和を維持するために働いていた。
 先の大戦時の彼らの考えを踏まえると、首をかしげるものも存在するが――――――彼らの想いが変わったことはなかったとだけはっきりしていた。
 
 
 “プラント市民の――――コーディネーターのために”
 
 
 そして、そんな彼ら四人はラクス・クライン、及び彼女側の人間たちがやっていたような“プラント市民への裏切り行為”には一切関わってはおらず……それどころか今回の計画を実行するための“調査”への協力をフェイスであるチャスカ・ザラに要請されていた。
 断る理由はなかった。
 自分たちも知らなかった……知ることの叶わなかったことを、積極的に――しかもクライン派に気付かれずにやっていたチャスカ・ザラに感謝し、心配し、そして積極的に彼女の計画に乗った。
 
 いくら先の大戦と、今回の大戦の“英雄”だからと言って、やっていいことと悪いことにはきっちり線引きがされる。
 
 それも分からずに未だ平然と行っている彼らを、先の大戦後辛酸をなめ、それでも再びプラント市民のために立ち上がった彼らが許せるものではなかった。
 
 
 
「これで、ようやく市民に謝罪が出来る」
「ああ」
「長かったな――――――」
「実際に、私たちが知ってからはそれほど時はたっていないがな」
 最後の言葉の通り、この計画を知らされたのは今から一年ほど前のことだ。
 その日は――――
「確か、チャスカの誕生日の翌日だったな」
「そう。誕生日にザラ邸に彼らが集まった際、一年以内に決着を付ける――そう、言ったそうだ」
「チャスカが?」
「そうだ」
 ライトナーの言葉に三人は苦笑する。
 
 “チャスカらしい”と言う思いと、“さすが”と言う思い。
 
 未だ今年のチャスカの誕生日が来ていない今日と言う日を考えれば、一年かからずに決着を付けたことになる。
 もちろんそれはたった十八歳の少女一人の力ではないだろう。
 自分たち四人は手伝ったが、さらにそれ以上の人数の彼女の幼馴染や知り合いが動いたことも間違いない。
 それはたびたび現況を報告してくる人物がそのたびに違っていることからも推察できる。
 しかし、それでも全てではないだろう。
 何せ今回の拘束劇で動いたザフトの人数があまりにも多い。
 しかも“平和の歌姫”であるラクス・クライン議長の派閥を一斉に、と言う状況でザフト側の混乱は一切なかったと言う。
 クライン派の拘束はスムーズに行ったとしても不思議ではないが、直接ラクス・クラインの拘束に動いた者たちの中には困惑するものがいたとしてもおかしくない。しかし、それは一切なく、全てスムーズに運んだと言う。
 ならば、その場にいた者たちの中では今回のこのことに関して周知徹底されていたことになる。
 そこまではいくら赤服のフェイスといえどもたった十八の少女に出来ることではない。
 彼女の年上の幼馴染たちが動かなければどうしようもないだろう。特にどこの隊にも所属していないチャスカには、明確に“部下”と呼べる存在がいないからなおさら。
 そして彼女の幼馴染――――司令官クラスのイザーク・ジュール、エリザベス・ライトナー、副官クラスのディアッカ・エルスマン等、幼馴染でアカデミー同期の彼らのその力は、敵に回すと恐ろしいものがあることをライトナーたちは知っている。
 クライン派よりももっと――――
 
 そしてそんな力のあり、部下たちにも慕われ――――何より自分たちが納得できないことには頑として動かない彼らを納得させ、うまく動かす彼女が。
 
 
 
 
「そろそろ行くか」
 言ったのはジェレミー・マクスウェルだったが、他の皆が頷いて立ち上がった。
 これから彼らは会見を開く。
 今回の騒動の顛末を市民に説明するために。
 きっと議会は責められるだろう。
 自分たちも関わっていなかったとはいえ、気付かなかった――――気付かなければいけなかったことに対する責任を問われるだろう。
 現在の職を辞任しなければならないかもしれない。
 けれど――――それでもいいと全員が思っていた。
 自分たちが辞職しても、“不正を働いていた”クライン派は全て捕らえられた。
 ならば彼らが自分たちのあとに議員になることはない。
 その後もチャスカならば目を光らせているだろうから心配はしていなかった。
 
 自分たちはプラントとプラント市民のために存在しているのだから。
 
 プラントと、プラント市民のためならばその職を辞することをためらうことはない。
 そんな想いを抱えながら、四人は会見場へ向かった。

– END –

2020年10月27日

Posted by 五嶋藤子