廃棄されたのは
戦後。
最高評議会入りをしたラクス・クラインが、アスラン・ザラとの婚約破棄を発表した。
「わたくしは、先の大戦で大切な方と出会いました。私はこの方を癒して差し上げたい。この方と共に生きたい。そう思ってしまう方と出会いました。アスラン・ザラとの婚約破棄は、このことが原因ではありませんが、今回の発表は今までその方とのことを考えた結果であることは間違いありません。今までは、先の大戦中にそれぞれの父親との間に起こったことで婚約破棄されていましたが、皆様にお知らせする機会を得ませんでした。けれど、いつまでもお知らせしないままでは私たちの関係はもちろん、皆様への影響を考えた結果、それは良くないことであると考えました。ですから今回、このような場を設けさせていただきました」
真摯なものであると考えたプランと市民は一体どれだけいただろうか。
それは現在、評議会の入ったビルを取り囲み、抗議の声を上げる多数の市民、そして各都市でメディアの取材を受ける市民のその表情と言葉を考えれば、そんな市民はいない、と考えてしまうのではないだろうか。
結局ラクス・クラインのしたことは、今まで市民のよりどころとなっていた婚姻統制の否定だ。
子供が生まれにくいコーディネーター。そのコーディネーターのよりどころの否定。
愛する人と共にありたいと思うのは普通だ。
けれど過去、メディアでアスラン・ザラとの仲睦まじい姿を見せていたではないか。それは全て演技だったのか。私たちをだましていたのか。偽っていたのか。
それとも、アスラン・ザラを愛していたのに心変わりをしたのか。
さらに問題は、“その方”であるキラ・ヤマトの経歴だ。
月にいて、それからオーブのコロニーであるコペルニクスにいた。そして戦後地球――――オーブへ……。
どこで出会ったというのだ。
どの状況で、出会ったのか。
オーブの人間がアカデミーを飛ばしてザフトに入れるわけがないだろう。
それなのにどうやって。
白服を着ているだろう。しかもラクス・クラインのそばに立っている。それならばそれなりの功績があってしかるべきだ。なのに話はまったく聞かない。それはどういうことだ……。
時間がたつにつれ、彼らに対する目は厳しくなる一方だった。
そうして訪れた市民の、ザフトの、そして評議会の決断の時。
オーブにいたアスラン・ザラが、評議会から招聘された。
そして――――――
「ラクス・クライン、キラ・ヤマト。――――あなた方がこの状況に対して“何故”、と問うならば、あなた方はあなた方が今立っている位置にいる資格がない、と言うことですよ」
そう言ったアスランの側には、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン。
そしてプラントを守るザフトと――――――ラクス以外の、最高評議会議員。
– END –
お題配布元:追憶の苑