真実 2
「で、何でここにいるんだ、オレ?」
一人で、一人暮らしにしてはでかい東方司令部の大佐の家の前に立って、ぽつりと言った。
「来るつもりなんてなかったのに………」
ガックリとうなだれてしまう。
『せっかくだからお邪魔しなよ』
そうすれば、明日一日図書館にいれるよ。
アルはそんな風に言ってオレの背中を押して、東方司令部から直接大佐の家に行くようにした。
………ちなみに大佐の家はホークアイ中尉に教えてもらった。
「…………だからってなぁ」
なんで、「今」何だよ。
別に明日でも良いだろ。
今日は図書館に行くつもりだったのに、この時間じゃ大佐の家を出て図書館に行ってもすぐ閉館になっちまう。
…………
ぶつくさ言いながらもここまで来たら報告書を出さないともったいない。
大佐いるかな……っつーか、いなかったらオレの労力はどうなるんだよ!!
そう思いながら、チャイムを鳴らす。
リンゴン
家の中にチャイムの音が響いたのが分かった。
それでも他の音はしない。
この家の防音がしっかりしているのか、それとも大佐はいないのか。
出来れば前者が良いな~なんて思いながら、大佐が出てくるのを待った。
…………………………………
「まじかよ」
いねえのかよ、大佐。
「ぐわー。せっかく来たっていうのに!!」
その場に頭を抱えて座り込んでしまう。
「やっぱ、明日にすればよかった」
そうすれば、確実に大佐に報告書渡せたのに………。
「…………ここで何もしないで帰るのも癪だしな」
そう言って、にやりと笑った。
きっとこれをアルが見たら呆れるだろう。
でも、その対象が大佐だとしたら慌てて止めるかもしれない。
けど、今そのアルはいない。
なら、遠慮するこたーないな。
いない大佐がいけないんだから。
そう思って、ぱちんと手を合わせた。
「何をするつもりだい?鋼の?」
今、まさに手を扉に当てようとしたとき、急にすっとその扉が開いていつもの呆れたような表情をした大佐が立っていた。
「………………」
「何をしているのか、聞いているのだが?」
いきなりのことにぽかんとしたオレに、そう言って大佐は明らかに不機嫌だ。
そりゃあ、オレが使用としたことが原因だとは分かるけど………って、そーじゃなくて!!
「いるんなら早く出て来いよ!!!」
そう言って噛み付いたオレを気にすることはせずに、大佐は何か邪魔されたときのような不機嫌さをあらわにして言った。
「気付かなかったんだから仕方がないだろう?」
「気付けよ!!」
「それを君が言うのかい?文献を読み始めたら周りなんかまったく気にしないくせに」
「ぐっ…………」
痛いところを衝かれてつまる。
そんなオレを見て、大佐は勝ち誇ったような表情でオレを見下ろしていた。
………見下ろされるこの身長差が………むかつく。
そんなオレの感情を知ってか知らずか、大佐は少し機嫌を直したような声で言った。
「それで、何の用だい?わざわざ私の家まで来て………」
「………あ」
その言葉で、危うく忘れかけていた報告書のことを思い出した。
そんなオレに大佐は呆れたような表情をした。
それに少しムカッとしつつ、オレは報告書を渡す。
「はい、報告書」
「……ああ、そのために来たのか。別に明日でも良かっただろうに………」
そんなことを言いながらも、大佐は報告書を受け取る。
「オレはそう思ったんだけど、ホークアイ中尉がきっと大佐は家にいるだろうからって言って、アルまで言って来いって言うから………」
そうすれば、明日は一日図書館にいれるからってさ。
「………まあ、そうかもしれないね」
変な間を置いて、大佐はそう同意した。
「…………そうかもって…なんでだよ」
そうじとっと見ると、大佐は肩をすくめて言った。
「報告書に間違いがなければ、明日一日図書館にいれるけれどね………」
今回はどうかなあ?
にやにやしながらオレを見下ろす。
「……………!!」
ムカッときたけれど、前回のことを思い出せば何も言えない。
それを分かっていて大佐も言っているのが分かる。
「まあ、いい……」
何が良いんだか分からないけれど、そんなことを言って大佐は扉を大きく開く。
「入りなさい。今すぐ確認しよう」
「……おう」
そう答えると、大佐の後に続いて中に入った。
– CONTINUE –