真実 4

 エドワードが完全に見えなくなってからロイは扉を閉める。
 もう尋ねてくる人間もいないだろうと、全ての鍵をかけてしまう。
 
 
 
「それにしても、鋼のがあれを気にしていたとはな………」
 
 
 
 まったく、あの格好でも気が抜けないじゃないか………。
 
 
 
 そう呟きながら廊下においてある姿見に自身を映す。
 そのロイの表情はロイであってロイではなかった――――――。
 
 
 
 
 
「それにしても『てかてかしてた』とは……」
 言い得て妙だな……さらに気が抜けなくなったな。
 そう言って、ロイは寝室の扉を開けて、隅に置いてあるものを手に取った。
 
 
 それは長い黒髪のかつら………。
 
 
「確かに本物とは違うが………」
 あの距離でこれを判別できるのか?
 そう言って、手でその質を確認する。
 それは本物の髪とは違う質感で。
 エドワードが言ったことはあながち間違いではないだろう。
 本物そっくりに作ってはあるが、やはり偽物。
 まったく同じにすることは難しい。
 
 質感も
 
 見た目も
 
 光の反射具合も………。
 
 同じには出来ない。
 
「しかも、私の髪は綺麗だと言われ続けているからな………」
 やはりそこはロイも女性。
 髪が綺麗と言われることは嬉しいようだ。
 ………それでもすぐにその表情を隠してしまったが。
 
 
 
 
 
 
「さて………ばれないように気をつけておかなければな」
 少し経って、そう言ったロイは先ほどとは違う、ロイ・マスタング“大佐”の顔になっていた。
「ばれたら私の目標が達成できないばかりか………」
 
 
 
 裁かれかねない。
 
 
 
 そう呟いたロイは、手に持っていたかつらをクローゼットの奥深くへと隠し、何事もなかったように部屋を出て行った。

– END –

2020年10月25日

Posted by 五嶋藤子