2. 純白
寒い朝。
カーテンの隙間からこぼれてきた朝日に目を覚ました。
「ふぁふ………」
小さくあくびをして少し動く。
もそもそと起き上がって伸びをすれば、傍らから温かな感触がオレに擦り寄る。
「ぅ………ん…………」
微かに声を上げて擦り寄ってきたのは愛しい人。
「ロイ…………」
そう言って髪を梳けば気持ち良さそうな顔をされて、オレは嬉しくなる。
そんなキレイなロイの顔を見下ろしながら思う。
(よくオレのこと好きになったよな……ロイも………)
オレがロイのことを好きになるのは別に不思議でもなんでもない。
14も年下のオレが好きになってもおかしくないほど、ロイにはそれだけ魅力がある。
………未だにオレとロイが付き合っているのを知っているくせに諦めてないヤツがわんさかいるのがいい証拠だ。
それを潰すのにオレは必死なのに、当のロイは気付いてないしな………。
そんなロイの鈍さと言うか周りの目がまったく理解できていない現状に頭が痛い。
…………まあ、そんなところも可愛いんだけどさ。
………なんて、ロイに言ったら間違いなく燃やされそうなことを考えながら―ロイはこういうところは恋人のオレにも容赦はない―、ふと、さらに燃やされそうなことが頭をよぎる。
その原因は今のロイの姿。
………真っ白なシーツを体に巻きつけている。
そして、その下は………何も身に付けてないんだよなぁ………………。
まあ、その理由は脇に置いておくとして。
その姿が…………純白のドレスを着ているように見えた。
ロイの肌は軍人とは思えないほど真っ白だから、余計に映える。
まあ、何を着てもロイは結構映えるんだけれど……。
その、ロイの姿に愛しさが募る。
ロイはオレが旅に出る日でも何も言わない―――言葉では。
でも瞳はその気持ちを如実に表している。
それを見るとオレは残りたいと思う………と同時に嬉しくも思う。
寂しがっているロイには悪いけれど、それほどロイがオレのことを好きでいてくれると分かるから……旅に出る前はその瞳の色を探してしまう。
………………きっと、ロイの気持ちが信じきれていないんだろうな。
ロイの純粋な、汚いものに染まっていない心に対して、オレの汚さがイヤになってくる。
そんなオレをロイには知られたくないな………。
そんなことを思いながら、ロイの姿に見惚れる。
どうしてこんなに綺麗な人がいるんだろうな。
そして、こんなにも綺麗なのにどうしてそう言う人に厳しいことばかりが起こるんだろう。
それを思うと、悲しくて仕方がない。
せめてオレのできることはと考えて、こんなときにロイの眠りを妨げることが無いように守ることしか出来ない。
まだまだ、オレは子供だから。
どんなに言おうと、足掻こうと、まだ子供でしかない。
何かあると後見人のロイに連絡が行って処理してもらっているのがいい証拠だ。
だから早くアルを元の姿にに戻して、オレの腕と脚を取り戻して、ロイの役に立てるようになりたい。
今のままだったら、ロイの役に立つことがあるかもしれないけれど、足を引っ張ることのほうが多い。
ロイは気にするなと言ってはいるけれど………気にするなと言うのは無理な話だ。
恋人に迷惑をかけたくはない。
だから、焦るんだ。
自分の無力さに、子供であると言うことに…………。
「エド…………」
「ロイ?」
「…………………」
「…………寝言か」
ロイは考え事をしていたオレに、寒かったのかさらに擦り寄ってくる。
「…………」
そんなロイが寒くないように、オレは寝転んでロイを抱きしめた。
ロイの全てを守れるようになるまでは、これしかオレの出来ることはない………。
そして、一番守りたいのはその綺麗な、純白の………心。
– END –