ある日の指令
ぱきりと足下で踏み付けたものが壊れる音がした。
人の声のしないこの場所では、たったそれだけでも辺りに響く。
それでも私は気にすることなく進む。
――――本当に何もない。
ここへ来る前に寄った東方司令部では、中佐を始め皆にここには何もないと言われた。
皆、この場所にいい思いではないのか、私がここへ来ることにいい顔はされなかった。
それもそうか、と思う。
ここは元戦場。
彼らは軍人としてここに来たのだろう。
けれど私はここに来なければいけない理由があった。
私の目で確認しなければいけないもの。きっと中佐たちは知らないから。
そのために私は黙々と歩を進める。
そしてこの町の一番奥、それはそこにあった。
そこは神に祈る場所。
禁忌を犯した私が来ていい所だとは思わない。
それでも確認しなきゃいけないことのために、私は教会に足を踏み入れた。
そこにあったのは正面に掲げられた祈りの対象。
それ以外には何もなかった。
むしろこれが残っていること事態が不思議だ。
本当に、他には何もないのに。
でも私の目的はこれじゃない。
ここが戦場になる以前に、ここに赴任していた軍人が隠した軍事機密。
それに気付いた軍が回収する前に戦場になってしまった。
もちろん戦が終わった後、秘密裏に捜索が行われた。
けれど……発見されることはなかった。
今回私がここへ来ることになったのは、その軍事機密の隠し場所に関する情報が入ったから。
それがここの、ある場所だったんだけど――――
「まあ、可能性は低かったけど……」
考えていたことだから、大してショックではない。
この指令を出した大総統でさえ、同じように考えていた。
だから見つけられなかったからといって、私が罰を受けることはないから気が楽だ。
それでも一応探したけれど、見つからなかったときちんと報告しなければいけないから、確認のために私は隠し場所との情報のあった周辺に向かった。
– END –