明かされた真実

「私たちのことはわかったわ」
 だからと言って、どうするかはこれからアスランと決める。必要なら発表はするけれど、必要ないと判断すれば握りつぶすから。
 そう言い切ったエリザベスに、全員が頷いた。もちろんアスランも。アスランはエリザベスの考えを尊重することは、みながわかっていたことだったので、誰も不思議にも思わなかった。
「それで、ひとつ疑問に思ったのだけど」
「うん」
 何? と首をかしげるチャスカに、エリザベスは言いにくそうに……それでも口を開いた。
 
「私たち以外の解析結果って、あるの?」
 
「は?」
「あの頃、確かほとんどの議員の子供は検査を受けていたはずよ。ちゃんと説明があって、遺伝子の提出をしたもの」
 エリザベスの言葉に、そう言えば、と当時の子供たちは思う。
 親たちを見れば、お互いの顔を見合わせていて……その表情から、結果は知らないのだとわかる。
 それならば結果は出ていないと判断するのが自然だ。
 けれど……と思うのもまた事実。
 アスラン、エリザベス、そしてラクスの結果が出ているのであれば、他の結果も出ていたとしても不思議ではない。むしろ出ていて当然だ。婚姻統制はプラントの政策なのだから、いい結果は多いに越したことはない。
 しかしさすがにそこまではチャスカも知らないだろうと視線を移せば、当のチャスカは困ったような表情を浮かべている。
「…………知っているのね」
「う……ん。まあ……狭い範囲でなら……」
「どうして知っているの? 元議長が送ってきたのは、私たちのデータだけなんでしょう?」
「それが…………デュランダル氏も知らなかったことなんだけど――――」
 
 隠しファイルがあって、そこにここにいる全員分のデータがあったの。
 
「きっと、私たちの関係をデュランダル氏から聞いていたんだろうね。いくつかトラップが仕掛けられていたけど、同じメモリーに入ってた……よ」
「…………」
 ここにいる全員分、と言うことは、ここにいるエリザベスたち幼馴染全員のことだ。
 それにはさすがにみな絶句する。
 その反応に困ったようにうつむくチャスカは、ルイーズ・ライトナーの言葉に顔を上げた。
「それなら、いっそここで言ってしまわないか?」
「……え?」
「エリザベスやアスランだけみなが知っていると言うのは不公平だろう。それならいっそ、全員どうなのか話してしまえばいいのではないか?」
「…………でも……」
「どうせ幼馴染同士なんだ、今更ここで公表されたとしても困ることはないだろう? 全員そんなことで流される人間ではないのだし、何よりチャスカだけが知っていると言うのも問題だ。それでは全てチャスカが背負ってしまうことにつながらないか?」
「それはそうだな」
「私はそれに賛成だ」
「ああ」
 当の子供たちを置いて、大人たちは納得したように頷いた。
 困るのはチャスカだ。
 チャスカ自身は“背負っている”と言う意識はないし、それが重いと感じたこともない。普段はそんなこと考えたこともないのだ。
 けれど親たちはそうは思っていないようで、子供たちの性格も影響しているだろうが、チャスカに「言ってしまえ」と口にする。
 だが、さすがに本人たちの意見を無視することは出来ない。
 まあどうせ「言っても良い」と言うんだろうな……と思いながら視線を移せば、目に飛び込んできたのはエリザベスとアスランの笑顔。
「????」
「チャスカ」
「言って。私たちだけがばらされるなんて不公平よ」
「え、あ……いいの?」
「「いいよ(の)」」
「「「や、お前たちが肯定するな」」」
 突込みが入るがそんなことを気にする二人ではない。
 ただ、自分たちだけが当事者として驚くのは嫌だと思っただけだ。気持ちを知られているからなおさら。それなら全員の分を知りたいと、そう思った。
「みんなが良いなら……言うけど……」
 本当に良いの?
 最終確認を取るチャスカに、エリザベスとアスランは笑顔で、それ以外の幼馴染たちは肩をすくめつつ肯定した。

◇◆◇

「ええっと……それじゃあ、どの順で言えば良いの?」
 全員が聞く体勢を整えたところで、チャスカが疑問を口にする。
「…………年齢順、で」
 最初にばらされたエリザベスが口を開いた。
「私が最初だったから、それなら女のほうで年齢順」
 つまりセレーナ、マリア、リラ、チャスカの順で話せということだ。
 さすがにそれには文句を言いたかった者がいるが、エリザベスの「私が最初だったから」という言葉を思い出して口を閉じる。それを言われてしまっては何もいえない。アスランでは上も下もいる状態なので、誰からばらされるかそこで喧嘩が起こりそうというのもある。
「それから、全員のデータがあるってことは、各組み合わせの結果があるということ?」
「うん、あるよ」
「「「「「え?」」」」」
「誰と誰は相性が良くて、誰と誰は相性が悪いって言うのもある……と言うより、各自――たとえばエリザベスに相性のいい順に名前をあげることも出来るよ。確率も書いてあったし」
「「「「「…………」」」」」
「その値、全部覚えてるの?」
「もちろん」
 リラの質問にもチャスカははっきりと答える。
 さすがにそこまでのデータがあるとは思っていなかった。誰と一番相性が良いか位だと思っていた。
 それが、チャスカの話では全部と言うことではないか。しかも数値まで。
 何でそんなものまで託したんだと思わずにはいられないが、チャスカが知っていると言うならば、話せると言うならば聞きたいと思ってしまうのもまた事実。
 結局、満場一致でチャスカの把握しているデータを知ることになった。
 
 
 
 とは言え、全部はさすがに無理な部分もあるので、チャスカの口にした相性の順位と、確率を話してもらうことになった。
「えっと、まずエリザベスだけど、一番はお兄様ね。確率は99.6%。二番目がニコルで89.0%。ラスティの85.1%、ディアッカの66.4%、そして最後にイザークの40.5%」
 周囲の様子を見ながらの言葉。
「アスランダントツじゃん」
 口にしたのはラスティだったが、口に出さないまでも全員がそう思っていた。
 けれど感想は後で言うことにして、とりあえず全てのデータを出してもらうことでその場の意見は一致していた。
 
「次にセレーナは、一番がニコルで95.4%、ディアッカの80.3%、お兄様の70.2%、イザークの45.0%」
 
「マリアは一番がラスティで91.3%、お兄様の87.9%、ニコルの77.7%。で、イザークの50.0%」
 
「リラは一番がディアッカの97.6%、ニコルの90.1%、お兄様の79.3%、ラスティの60.2%。最後にイザークの49.9%」
 
「思ったけど、イザークって確率低いね……」
 口にしたのはマリアだ。
 彼女自身専門は医学なので、遺伝子と出生率には多大な興味を持っている。
 その一人だけあまりにも低い値に首をかしげた。
 けれどチャスカは苦笑するだけだった。
 彼女自身もそう思っていたのだろ。
 ただしここでの言葉は避けていた。
 ……次は、当のチャスカの番だからだ。
 
「そして、私は一番がイザークで98.9%、ラスティの69.9%、ニコルの65.2%、ディアッカの60.0%」
 
 言い切ったチャスカは困ったような、なんともいえない表情。
 確かに今まで誰とも確率の低かったイザークと、高い確率で相性がいいと言われてしまっては戸惑うだろう。
 それはイザークにも言えることで……というより、何よりも全員が“望んだ結果”を示されてしまっていて戸惑っていた。
 
「何だか……都合がいいよね」
 
 ポツリとつぶやかれた言葉に、幼馴染たちは互いに顔を見合わせ……そして頷いたのを親たちはしっかりと見ていた。

– END –

男側から見た結果(年齢順)
ディアッカ:リラ(97.6%)、セレーナ(80.3%)、エリザベス(66.4%)、チャスカ(60.0%)
イザーク:チャスカ(98.9%)、マリア(50.0%)、リラ(49.9%)、セレーナ(45.0%)、エリザベス(40.5%)
ラスティ:マリア(91.3%)、エリザベス(85.1%)、チャスカ(69.9%)、リラ(60.2%)
アスラン:エリザベス(99.6%)、マリア(87.9%)、リラ(79.3%)、セレーナ(70.2%)
ニコル:セレーナ(95.4%)、リラ(90.1%)、エリザベス(89.0%)、マリア(77.7%)、チャスカ(65.2%)

どの辺までが高確率かわからないので、こんな値に。
ラクスを入れるの忘れた(汗)。

2020年10月27日

Posted by 五嶋藤子