Pride 2
「アスラン!!」
守るべきものを守れなかった男の――――叫び。
その声を耳にして、私は心の奥底で嗤った。
ああ、ようやくお前も私と同じ経験をしたのだ、と。
仲間を失うことがどんなことなのか――――お前はようやく知ったんだ。
戦闘の最中に私は不謹慎にも嬉しくて仕方がなかった。
だってようやくキラ・ヤマトは私と同じ場所に立ったんだから――――。
それでも。
それでも決定的に違うところがある。
キラ・ヤマトは“アスラン・ザラ”が既にいないことを知らない。
けれどもう、今更知ったところで何もならない。
これから死んでいく人間に、そんなこと必要ないでしょう?
目の前にはフリーダム。
その中にはキラ・ヤマト。
私の――――敵。
それだけで十分でしょう?
「キラーーーー!」
呼びたくもなかった。
もう二度と、口にしたくもなかった名前を私は叫んだ。
ここまできて“アスラン・ザラ”であろうとする自分に嗤ってしまう。
けれど……そう、たとえ過去“アスラン・ザラ”の隣に“キラ・ヤマト”がいた事実があったとしても、あの時からそんな事実は必要なくなった。
だからこの先も同じ――――――。
エネルギー残量が残り少なくなったと警報が鳴り響く。
けれど私はそれに“負ける”なんて気持ちは少しもわかなかった。
たとえエネルギーが少なくなったとしても、フリーダムを倒す方法なんてまだあるんだから。
そうして私はフリーダムを捕らえると、そのまま自爆パスワードを入力する。
さあ、もうおしまいにしましょう。
これ以上、お前にザフトの兵士を殺されるわけにはいかない。
そう思ったのと同時に、私はエンターキーを押した。
そして――――――
◇◆◇
「スパイの手引きなど……しておりません」
「今のキラに必要で、キラが持つのがふさわしいから……」
馬鹿なことを、と“アスラン・ザラ”を演じながら、私はそう思った。
何を馬鹿なことをしたんだと、ラクス・クラインに詰め寄りたいのをぐっと我慢して、私は信じられないと言う表情をする。
――実際に、信じられないのだけれど。
なんて馬鹿なことをしたの、ラクス・クライン。
けれどそんな目の前の“平和の歌姫”が、望みそうな反応を演じる私自身、滑稽だと思う。
何故こんなことをしているのだろうかと思うけれど、今はまだ“アスラン”でいる他ないのだから。
それ以外に今の私に望まれることはないから、私は演じ続ける。
「アスランが信じて戦うものは何ですか? いただいた勲章ですか? お父様の命令ですか?」
お前に何が分かる、と内心で嗤う。
何も知らないくせに。
何も気付かないくせに。
キラ・ヤマトと同じくせに。
同じように、“ラクス・クライン”として望まれているお前に何が分かる。
何より――――あの“クライン”のくせに!!
そうして、次にはっきりとラクス・クラインが言ったことは――――
「敵だと言うのなら、わたくしを撃ちますか? ――――ザフトのアスラン・ザラ?」
お前が仲間だったことなどないでしょう?
その後のことは、正直『最悪だ』としか言いようがない。
父の手の者が乱入してきたことも。
ラクス・クラインが言いたいことだけ言って、結局自分は守られて出て行ったことも。
何より、一番は父が私を信用していなかったこと。
結局のところ、“私”は“私”としてしか父に見られていなかったんだ。
当然のことだけれど、それでも私を“アスラン・ザラ”としているのなら、“アスラン・ザラ”として信用すべきじゃないのか……と、そんなことを考えてしまう。
それでも、結果を見れば父の判断は正しかった。
そう……結果的に、私はラクス・クラインを取り逃がしてしまったのだから。
父の判断は正しかった。
ただ、私のあとを付けさせた男たちの実力がまったくなかったことを除けば。
ZGMF-X○九A“ジャスティス”を見上げながら思う。
私が望まれていること。
私に望まれていること。
それは“アスラン・ザラ”に望まれていることと、同じようで違う。
“アスラン・ザラ”でいる私には、同じなのかもしれない。
けれど――――同じだとは思えない。
他の誰が同じだと言っても、私自身が思えない。
そんな私の出来ること――――プラントを守るために出来ることなど、そう多くはない。
そう思って私は“ジャスティス”に乗り込む。
本当に、大層な名前だと思う。
一体誰がつけたのだろう。
一体誰が“アスラン・ザラ”に与えようなどと言い出したのだろうか。
答えなんて出るわけがないけれど、疑問に思ってしまう。
そんなものに、私が搭乗するのが不思議でならない。
“正義”など――――――偽りの私にあるとは思えないから。
– CONTINUE –