Pride 3

 見下ろした先、そこでは“フリーダム”と地球連邦軍のMSが戦闘を繰り広げていた。
 私はそれをただ見ているだけ。そう、見ているだけ。
 だってそれ以外に何ができると言うのか。
 
「…………馬鹿だね」
 
 一対三で、何ができると言うのか。
 まあそれでも、オーブの理念を守るにはこれしかないのだろうけれど……。
「――――――あれは……ディアッカ?」
 ジャスティスのモニターを切り替えていると、アークエンジェルを支援している見慣れたMSが目に飛び込んできた。
 それはヘリオポリスでディアッカが強奪したはずのバスター……。
「ディアッカは……あの時MIAになったはず……」
 そのとき乗っていたバスターがあそこにあると言うことは、ディアッカもオーブにいることになる……生きていれば。
「確認はしてみるべきよね」
 そう考えて、私はザフトの通信コードで、バスターに繋げようとする。もしオーブの人間が乗っていれば既にコードは書き換えられているはずだ。そしてディアッカが乗っていれば……少なくとも、ザフトのコードも受け取るようにしているだろう。
 そうしてつないだ先、案の定反応があった。
 
「何をしているんだ、ディアッカ」
 
『アスラン……』
 モニターに映ったその姿は見慣れたものだった。
 けれど、その行動は理由のわからないもの。
 何故オーブの、アークエンジェルの味方をする!?
「何をやっている、ディアッカ」
『お前……今、どこに……』
「そんなことはどうでもいい。何故お前がアークエンジェルのを支援している?」
『…………考えるところがあってな』
 
 こいつらを守りたいと思ったんだよ。
 
 伝えられた事実に、私は怒りを覚えた。それと同時にひどく冷静に見ている部分も存在して……そうして、アカデミーの同期を簡単に切り捨ててしまえるくらいのものは持っていることに気付いた。
 
「では、この瞬間からお前は俺の――――ザフトの敵だな」
 
『おい! アスラン!!??』
 あわてた声。
 私にそんなことを言われるとは思っていなかったとでも言いそうな声。
 けれど、お前の言ったことはそう言うことだろう? 何せ、そこの“フリーダム”に乗っているのはニコルを殺した“ストライク”に乗っていたやつと同一人物。
「ニコルはキラに殺された。俺はそれを許すことは出来ない」
『おい!! お前はあいつと――――』
「だからなんだと?」
『っ!!!!!!』
「今更、関係ない。――――幼馴染だろうと、既に過去のことだ」
 衝撃で、言葉も出ないようだった。
 そのまま私は通信を切る。これ以上何も言うことなどなかった。
 ディアッカならばこの後もうまく立ち回るだろう。それに“赤”なのだから、それくらい出来なくては話にならない。
 最も、今度会ったときには容赦はしないけれど――――。
 
 
 その後、急に地球連邦軍のMSが撤退して行き――――今日の戦闘は意味のわからない終わり方を見せた。

◇◆◇

「アスラン!! 貴様ここで何を――――」
 オーブでの戦闘が終わったのを確認後、そのままヴェサリウスへ向かった。
 そこで久しぶりにイザークの怒鳴り声を聞くことになって――――。
「何って、用事があったからだ」
「っ…………」
「イザークの用がそれだけなら、俺は行くよ」
「どこへ……」
「そりゃあ、ここに来て行くところと言ったら一つだろう?」
 そう言ってきびすを返してイザークから離れようとして……ふと、思い出したことを口にしていた。
「イザーク」
「何だ?」
「ディアッカが――――オーブにいたよ」
「な、に……?」
 めったに見れない驚いた表情。だからと言って、何も感じないけれど。
「しかも、アークエンジェルを支援していた」
「何だと!!??」
 それだけを言うと、ふいっとイザークに背を向けて歩き出そうとした。けれどイザークがあれだけで満足するはずがない。
 案の定私の肩をつかんできた。
「おい、それはどういうことだ!!」
「そのままの意味、だ」
 それ以上どう言えと?
 聞けば、くっと歯をかみ締めた後に低く問うてきた。
「お前は……それを見ていただけか?」
「オーブと地球連邦軍の戦闘に、割り込むつもりはなかった。そもそも俺は俺のやるべきことのために動いていたに過ぎない。それは最重要任務だ。ディアッカのことに関わっている暇はなかった」
「キサマ……」
「――――ディアッカのことよりも優先すべきことがあった。ただ、それだけだ」
「…………キサマ、ディアッカは仲間だぞ」
「仲間でも、アークエンジェルへとついたあいつは、味方ではないだろう?」
「だが、オーブにいたのだろう!? 地球連邦軍にではなく!!」
「だが、アークエンジェルはニコルを殺した“ストライク”の仲間だ。許せるはずがない」
「っ…………」
 私の言いたいことを理解して、イザークは口をつぐんだ。
「わかったのなら放してもらえるか。ディアッカのことは、俺の任務が終わってから考える」
「っ……アスラン!!」
 振り切って歩き出した私の名前をイザークは呼ぶ。
 それは今までにない色を含んでいて……何故か私は歩みを止めてしまった。
「キサマ……キサマは――――――」
「何だ?」
「キサマ――――何があった?」
「何?」
 イザークの言葉に眉を寄せる。
 一体何が言いたいんだ?
 そんな私の疑問に答えるように、イザークは言った。
 
「キサマ……変わらなかったか?」
 
「………………」
 その言葉を聴いて、ああ、と思った。
 イザークは、気付いたんだと。
「そうだな」
 ふっと笑って答える。
 その笑みはきっと、イザークは見たことがないはずだ。
「っ!!」
 案の定、私の表情を見てイザークが息をのんだ。
 どこか張り詰めた空気が流れる。
 けれど私はそんなこと気にも留めない。
 そして、そうだ、と思って再びイザークに近づく。
 そんな私の行動にさらに緊張した様子のイザークに気付いたけれど、気にならなかった。
「いいことを教えてあげるよ、イザーク」
「――――――」
 イザークの耳元で、ほんの少しの暴露を。
 
「優しい“アスラン・ザラ”は死んだよ」
 
「っ……おい!!」
 息をのんで、それでもすぐに我を取り戻したイザークが叫ぶけれど、もう二度と私が立ち止まることはなかった。
 ただ、目的の場所――――クルーゼ隊隊長、ラウ・ル・クルーゼの元へ向かった。

◇◆◇

『君は変わったね――――アスラン』
 
 ジャスティスを起動させながら、さっき会ったばかりの隊長に言われたことを思い出した。
 
『すべてを吹っ切ったようだ』
『――――――』
『それが君の本当の姿なのだろうね――――“アスラン・ザラ”』
 
 隊長が知っているわけがないと思いながら、心のどこかでもしかしたら、と言う思いもある。
 それはあの仮面の所為なのかもしれない。そう思うと笑いがこみ上げてくるが……まあ、今はいい。
 それよりも、気になることが――――計画が崩れたことを気にするべきだ。
 
『“フリーダム”のパイロットが、あの“白い悪魔”と同一であるならば――――』
 
「それは私の仕事よ」
 クルーゼ隊長と私の立場を考えると、私のほうが上。
 そのはずなのに――――
「けど……刷り込み、かな」
 仕方がない。
 未だクルーゼ隊長には勝てないのだし。さまざまな部分で私の上を行く彼を納得させられるだけのものが今の私にはなかったのだ。

– CONTINUE –

2018年12月14日

Posted by 五嶋藤子