5行以内で50のお題 11~20
11. おやすみ
おやすみ、と言葉を交わして通信を切った。
滅多に通信をすることが出来ないから、既にいつも寝る時間よりも遅い。
それでも私は満足。
明日久しぶりに会える通信相手にもう一度心の中で呟く。
C.E.70年2月13日のこと。
◇◇◇
12. 名前
私の名前を呼ぶものは、もういない。
父王が亡くなった時にいなくなってしまった。
――それから数年。
ようやく見つけた。
ようやく出会えた。
けれど、そう思っているのはきっと私だけなのだろう。
◇◇◇
13. 痛みと悲しみともう一つの
痛い。苦しい。悲しい。
何時も浮かぶ感情の、その隅で生まれた別のもの。
それは今だからこそわかるもの。
総士がいないからこそわかった、俺の大切なもの。
◇◇◇
14. もしも
血のバレンタインが起こらなかったら。
意味のないことを考えていると思う。
けれどふと思う。
もしそうならアスランのことで、黒幕はちゃんと裁かれていたのだろうか。
◇◇◇
15 .こいねがう
お願いお願いお願い。
連れて行かないで。
お母さんを連れて行かないで。
一人は嫌。一人にしないで。
そう、ずっと願っていたのにその願いは叶わなかった。
私は母を失った。
◇◇◇
16. 雨が上がるまで
お預けになってしまった練習試合。
あーあ、とため息をついてしまう。
そんな私の横でくすくすと笑っている幼馴染は、雨が降り出すぎりぎりまで試合をしていて私よりは満足そうだ。
悔しい。折角男テニとやってたのに。
◇◇◇
17. 虹
プラントには太陽はない。
雨は降っても太陽はないから、虹は出来ない。
だから初めて地球で見た虹に、感動するとともに意味のわからない恐怖を覚える。
こんなことを考えるのは、きっと俺くらいなのだろうけれど。
◇◇◇
18. 一輪の花
はい、と渡されたのは小さな小さな花。
植物を統べる俺に花を贈る者などいなかった。
けれど……ようやく得た半身は、お構いなしに笑顔を向けてくる。
好きでしょう? と、言葉を添えて。
◇◇◇
19. 黄金の林檎
アダムとイブはそれを口にしたために楽園から追放された。
「それ、ほんとう?」
尋ねた少女に我はただ知らぬ、と答える。
何でも知っていると思われている。
実際は、まだまだ学ぶべきことが多いのだ。
◇◇◇
20. 相変わらず
強いね、と言われた。
当然よね、と言われる。
私のどこが強くて、どこが当然なのだろうか。
――私が誇れるものは、これしかないのに。
それ以外は何も持たないのに。