5行以内で50のお題 31~40

31. 神さま

 コーディネーターは神を信じない。
 それは私にも言える……けれど、どうしても願ってしまう。
 今はただ、これだけを――――どうか、アスランを

 か え し て

◇◇◇

32. 見捨てられた場所

 数年ぶりに足を踏み入れたそこは、懐かしくも悲しい記憶を呼び起こす。
「姉上」
 振り返れば母と同じ色。
 そこでようやく一人ではないと、もう一人ではないのだと知る。
 ようやく同じ思いを抱く弟が帰ってきたのだ、と。

◇◇◇

33. 砂時計

 さらさらと落ちてくる砂の音を耳にしながら、目に映ったのは希望だった。
 ああ、あいつなら大丈夫だと、意味もなく思った。
 天才だからじゃない。強いからじゃない。
 ただ、あいつだから。――楊ゼンだから。

◇◇◇

34. 瓦礫の王国

 ここはかつて、コーディネーターの希望がいた所。
 それが失われて久しい。
 ようやく“いない”ことに慣れた市民は今、別の拠り所を得た。
 彼らは決して裏切らない。
 だって彼らは言葉と行動に矛盾がないから。

◇◇◇

35. 透明なインク

 何度も何度も書こうとして、その度に手が動かない。
 ただただ会いたいと伝えれば良いだけなのに。
 その度に手は動かなくなる。
 涙だけがこぼれる。
 濡れた便箋だけを封筒に入れて、私は引き出しにしまう。

◇◇◇

36. 許されない願い事

 プラントのために、プラントで生きたい。
 そんな願い事、望んではいけないことはわかっていた。
 “ザラ”の俺には望んではいけないこと。
 どんなに望んでも、叶ってはならない願い事。
 何より裏切り者だから。

◇◇◇

37. 赤

 赤をまとうには、それ相応の力が要求される。
 それは果たして今の俺にはあるのだろうか。
 そんな疑問を持ってしまう程の現状に、自嘲的な笑みが漏れる。
 ああ、こんな俺を見たらあいつは何と言うだろう。

◇◇◇

38. 曇った空

 この日ばかりはこの空であって欲しいと、そう思ってしまう私がいる。
 既にもう何年もこの状態のため、この日に行事を入れる事はしなくなった幼年学校。
 子供たちには申し訳ないけれど、それでもこの日だけは――

◇◇◇

39. さよなら

 本当はもう少し、生きたかった。
 望むものはまだあった。
 それでも崑崙十二仙として、一人の仙人として、果たさなければいけない役割がある。
 だから私は行かなければならない。
 弟子を残してでも。

◇◇◇

40. 両手を広げて

 空を見上げて、手を伸ばしてみる。
「何をしているんだ? ――――」
「師兄」
 呆れた様な表情を浮かべた師兄に、私はただ思ったことを伝える。
「飛んでみたいなと思って……師兄みたいに自力で」

2018年11月19日

Posted by 五嶋藤子