5行以内で50のお題 41~50

41. 最後の言葉

『必ず帰る』
 その言葉を信じて、待ち続けて何年がたった?
 その間に様々なものが生まれ、死に。
 たくさんのものを得て、失い。
 もうすぐもっとも大切なものを失ってしまう。
 だから、早く戻って来い。

◇◇◇

42. 選択

 選ばせてやる、と言われた。
 どちらかを選ばせてやると。
 イザークは卑怯だ。そんな言い方は卑怯だ。
 そんなことを言いつつ、手を差し出すなんて。
 そんなことをされたら、許されていると思ってしまうじゃないか。

◇◇◇

43. 信じさせて

 何故だ、何故だ。
 どうしてあんなものを修復した?
 何の目的のために?
 あれのせいでいったい何人の同胞が亡くなったと思っているんだ。
 意味のあることだと、信じたいのにどうしても信じられない。

◇◇◇

44. 遠い背中

 まだまだ遠い、父の背中。
 追いつくさ、と口にする母に、無理だと思う心。
 どうしても口に出来ない。
 ――でも、きっと気づかれてる。
 だってそう口にする時の母の目は、いつも何かを懐かしんでいるから。

◇◇◇

45. 追い風を待つ

 ふと感じる風に意識を集中させる。
 次のポイントを取れば勝てる。
 二連覇。
 それは気にしていないけれど、全力を出す。
 それが何よりの望みで、喜び。
 だから勝利のために、今は追い風が必要だった。

◇◇◇

46. 紙飛行機

 ふわりと飛ぶ紙飛行機は、どこまでも飛んだ。
 どこまでも、どこまでも。
 それが僕たちの進むべき道を示しているようで、信じろと言っているようで。
 ――苦しかったけれど、うれしくもあった。

◇◇◇

47. 永遠

 どれだけ生きれば良いのだろう。
 既にもう、生きてきた時間を忘れてしまいそうになるくらいには生きた。
 もう良いだろう。もう。
 それでも我は生き続けてしまう。

◇◇◇

48. 光あれ

 良い名前だ。
 プラントで、友人となった人間にはよく言われるそれ。
 よくわからないが、出会って数年経つ同僚にふと言われた時、ああ、そうなんだと受け入れられた。
 認められた気がして、名前が誇りになった。

◇◇◇

49. お別れだ

 遠ざかるプラントを目にしながらそう思った。
 お別れだ。両親とも、妹とも。
 そして彼女とも。
 けれど、俺は彼女たちの性格を失念していた。
 簡単に諦めるような、そんな性格で戦争を生き残れるわけもないのに。

◇◇◇

50. 物語の終わり

 おしまい
 そう少女が口にすれば子供たちは皆いっせいにもっととねだる。
 また明日ねと言えば、絶対だよと指切りをする。
 そうすれば少女が約束を破らないことを知っているから。
 それはこの先ずっと存在する光景。

2018年11月19日

Posted by 五嶋藤子